ヘアスプレー
ハッピーなファミリーミュージカルだと思ってたけど結構深淵なテーマがいくつもビートのむこうにたくさん!
ダンス、生きる、自由、ビート、喜び。
こんな映画だと思わなかったよ。いい意味で。
60年代風の華やかなダンスとミュージックで終始ハッピームードはもちろん楽しい映画。コメディ要素たっぷりで描くのは、ハイスクールに通うおデブだけどダンスが大好きなスターを夢見る少女、トレーシーがローカルTVのダンサーオーディションに行って、なぜか採用、一躍有名になっていくおはなし。それから話はどんどん大きくなり・・。
ハッピーな中に重いテーマもいくつか描かれてるんです。だから希望を感じるんです。
1 黒人差別
町やスタジオ、あらゆるところで、まだ根強い黒人差別がある。世代が上の人には特に色濃く。「黒人と付き合ってはいけません」「黒人の音楽なんて」とか、けっこうストレートに出てくる。
でも天真爛漫でダンス大好きなトレーシーは、学校で知り合った黒人の友達に黒人街に誘われ「クール!」と素直によろこぶ素直さ。
ブラックのほか、中国人、おデブへの差別。マイノリティへの目。
一緒にダンスすると打ち解けちゃうんです。若者たちは。
2 人生を楽しむことへの障害は自分のこころに
母親を外に連れ出す。引きこもりで自信のない太っちょママ(特殊メイクのジョン・トラボルタ!)
ようこそ60年代へ!と唄うトレーシーに引きつられ街へ久しぶりに出てくる。次第に人生を楽しもうとするママ。
人と違うことが喜ばれるのよ!っていっておデブに開き直ってじぶんを開放するトレーシーがかわいいのだ。
3 好きなものは好き!
母親の懸念を振り切ってダンサーのオーディションを受けに行くトレーシーの若い情熱が、周りの人をも変えて、運命も変えていくことになるの。新しい時代も切り開いてしまうの。差別のない世界、愛のある世界。
4 新しい世代への軽蔑と恐れ
新しいものを受け入れられない、かつてのトップスターベルマ(ミシェル・ファイファー。めっちゃきれい)凝り固まった規制の価値観を捨てられず、それを軽々と超えて行こうとするトレーシーをつぶそうとする。気に入らない。
黒人、黄色人、おデブも締め出そうとする。でもでもそれで苦しむのはほんとうは本人なんだよね。
5黒人の生の声
お金がない、差別される、でも生きる力がある、思いっきり自分を表現して楽しむ人生への態度。そしてヒップなダンスと歌がもうね、体うごいちゃう。
あんまりフィーチャーされないけど、トレーシーのお父さんもとぼけてておもしろい。頭の中になんの障壁もなくて、たよりないけど飄々と自分を生きてる自由人。そうみえないけど。ママとけんかして、ぶーぶークッションで寝てるシーンが情けなおもしろい。
後半で、あんなに愛してたTVショーを蹴って、黒人の差別反対デモに参加するトレーシー。自分のこころにただ従った彼女だからこその行動なんだ。つよい子だ。ほんとの勇気って、自分に正直であることなんだ。
後半戦の彼女は、自分ひとりのやりたい!を100%みとめて行動したことで、あらゆる差別も越えて行く対象になったんだろうな。
そんな重いテーマもたくさん入ってるんだけど、とにかくヒップでグルービーな歌とダンスでハッピーなミュージカルだから。
唄って踊れるぽっちゃりニッキー・ブロンスキーかわいい。さいこう。
最後のハッピーエンドでたたみかける怒涛のダンスと歌がとめられない。”川が海へ流れるのをだれもとめられない♪”
黒人の少年少女のダンスのグルーヴが胸にくるぞ。